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地質・地球生物学講座の生物圏進化学研究室に2012年度まで在籍していた寺石瑛人さん(指導教員:須藤 斎)の修士論文の内容がDeep Sea Research II に受理されました!
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Teraishi, A., Suto, I., Onodera, J. & Takahashi, K. (in press). Diatom, silicoflagellate
and ebridian biostratigraphy and paleoceanography in IODP 323 Hole U1343E
at the Bering slope site. Deep Sea Research II. doi: 10.1016/j.dsr2.2013.03.026
本論文では,2009年7月〜9月に実施されたIODP Exp. 323によってベーリング海陸棚び斜面から採取したHole U1343Eの堆積物コア中に含まれる珪藻と珪質鞭毛藻およびEbridian化石を顕微鏡観察とカウント作業,統計学的な分析を行って,生層序による堆積年代の決定と古海洋環境復元をしました.さらに同掘削航海で採集されたHole
U1341Bの分析結果とも比較を行いました.
その結果,コアの堆積年代は北太平洋珪藻化石生層序のNeodenticula seminae Zone (NPD 12; 0.0-0.3 Ma)からN. koizumii Zone (NPD 9; (2.0-2.2)-(2.6-2.7) Ma)を,また,珪質鞭毛藻生層序ではDistephanus octangulatus ZoneからDictyocha subarctios Zone,Ebridian生層序ではAmmodochium rectagulare Zoneが確認されました.
さらに,古環境を復元するために,産出した珪藻をCold-water (低温・低塩分な環境の指標種),Sea-ice related (海氷指標種),Temperate-water
(温暖な環境指標種),Neritic (浅海指標種),Open-ocean species (外洋指標種)に区分し,その産出頻度の変化を調べました.その結果,Cold-waterとSea-ice
related speciesが常に多く産出し,本地域が常に寒冷で季節的な海氷の形成が起こる環境であったことや,1.9 MaにはTemperate-water
speciesの減少とCold-water,Sea-ice relatedおよびNeritic speciesの増加が確認されたため,本地域で急激な寒冷化と浅海化が起こったことが分かりました.また,0.9
Maには,Cold-waterとSea-ice related,Neritic speciesの増加と,北太平洋からの海水の流入を指標するN. seminaeの減少が観察されました.この時代には,全球的な寒冷化(Middle Pleistocene Transition (MPT))が起きたことが知られており,本サイトもMPTによる寒冷化の影響を受けて海氷が発達して浅海化した結果,北太平洋からの海水の流入が減少したと考えられます.
珪質鞭毛藻化石の分析結果からは,1.4 Maまで寒冷な環境の指標種が卓越しているため,安定した寒冷な気候にあったことが示されました.その後,1.25
Maから0.9 Maにかけて海氷の指標種が増加しており,珪藻化石による結果と同様にMPTに起こった寒冷化の影響を受けていたことと考えられます.一方で,1.085
Maに温暖な環境の指標種が一時的に急増しており,本サイトがこの期間に温暖な環境であったことが示されましたが,この変化は珪藻化石からは観察されないという事実も判明しました.
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