地球規模課題対応国際科学技術協力事業

防災分野「開発途上国のニーズを踏まえた防災科学技術」
コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発


コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発

研究計画

1.モニタリング:

1-1高度即時震源解析】コロンビア地質調査所(SGC)が運用する地震観測網を活用するとともに、超巨大地震においても正確に地動を記録可能な広帯域速度型強震計を設置します。高度即時震源解析システム(SWIFT)を導入し、コロンビアで発生する地震のメカニズムと震源時間関数を自動的に決定します。

1-2 津波予測】SWIFTによる震源パラメータ推定と連動させた津波予測システムの開発を行います。津波予測には津波の分散波と津波による固体地球の弾性変形を考慮した全球モデルを用います。これにより、近地津波だけでなく日本に影響のある遠地津波に関してもその予測の高精度化を図ります。

1-3 火山監視】ネバド・デル・ルイス火山とガレラス火山を対象として、広帯域地震計・空振計等の機材の設置を行い、現有機材とあわせて多項目観測を実現します。地震波の高周波振幅を用いた自動震源決定システム(ASL)を導入し、火山性地震の活動監視を行います。さらにASLと空振計のアレー観測を用いて土石流を監視するシステムの開発を行います。

2.モデリング:

2-1 プレート固着分布】SGCGPS観測網に新設点を増強するとともに、GPSデータを用いてナスカプレート及びカリブプレートの沈み込みに伴うプレート境界固着分布や、陸域のブロック構造推定およびブロック・断層モデルによる運動学的モデルの構築を行います。これらの解析結果を基に、地殻変動による歪み蓄積状況に地震活動を加味し、将来の地震発生ポテンシャルを定量的に評価します。

2-2 シナリオ地震】2-1の結果や歴史地震および津波履歴の情報を用いて海溝型巨大地震の震源モデルを作成し、盆地に位置するボゴタ市におけるシナリオ地震による強震動シミュレーションを実施します。ボゴタ盆地の表層および深部の3次元地盤構造を推定するために微動観測を実施します。また高感度地震計をボゴタ市内に設置し、地震干渉法を用いてより深部の地震基盤までの地盤構造を推定します。

2-3マグマシステム】火山で取得される地震・空振・熱画像・地殻変動データ等を用いて、対象火山のマグマシステムと噴火過程のモデリングを行います。マグマ圧力源の推定を行うとともに、波形インバージョン、クラック振動モデル、地震・空振相関手法、熱画像解析等を用いて火山性地震の発生過程や噴火過程の解明を進めます。過去の観測データについても最新の知見を用いて再解析を行い、マグマシステムと噴火過程の理解を深めます。

3.被害予測:

3-1 強震動被害予測】コロンビアおよびボゴタ市の強震観測網のデータを用いて、地盤の増幅特性を考慮した空間補間処理に基づく最大地動加速度・最大地動速度等の地震動マップと地盤災害危険度マップを自動計算します。さらに、ボゴタ市の建物やライフライン台帳データと重畳し、被害関数を適用することでリスクマップを生成します。このシステムに必要な基盤データとして地盤の増幅度マップと被害関数がありますが、前者については微動計測やボーリングデータ、地質・地形等に基づき作成し、後者についてはコロンビアの都市および地方の建物現況調査および過去の地震被害分析等から都市・地域の建物群の脆弱性を評価して構築します。

3-2津波被害予測】津波被害に関しては、最も懸念されるのはナスカプレートの沈み込みに伴う巨大地震による近地津波ですが、カリブプレートの沈み込みやカリブ海の遠地津波など、様々な津波事例の整理と防災対策への備えが必要です。そこで、津波被害の予測技術の構築に向けて、(a)コロンビアにおける巨大地震津波の履歴と想定津波発生シナリオの検討、(b)コロンビア沿岸部における津波発生・伝播特性の把握、(c)津波浸水予測と津波被害関数を利用した津波被害想定手法の確立、(d)人口統計データとの統合分析による津波曝露人口と人的被害の推定、(e)津波の被害軽減に資する具体的軽減対策の基盤構築のテーマに取り組みます。

4.情報伝達:

4-1防災情報ポータル】震源情報、津波情報、火山監視情報、強震動地動マップ・リスクマップ、津波被害想定等が一元的に閲覧できるポータルサイトを作成します。

4-2ソーシャルメディア】クラウドおよびソーシャルメディアを活用することで、防災関係機関や一般市民に広く防災情報を周知するシステムを構築します。このシステムは、現地機関が所有する情報システムおよび地震動マップ即時推定システム(QuiQuake/QuakeMap)の機能を参考にして、防災情報を発信するアプリケーションを開発します。パブリッククラウドサーバーとtwitterFacebook等のソーシャルネットワーキングサービスを用いることで、一般性・拡張性・安定性を備えた情報配信システムの構築を行います。

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