地球規模課題対応国際科学技術協力事業

防災分野「開発途上国のニーズを踏まえた防災科学技術」
コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発


コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発

研究背景

  •  地震・津波・火山災害は、世界のプレート沈み込み地帯で共通する問題であり、我が国の世界トップレベルの観測技術や研究成果に関する知見を用いても、これらの災害を予測し被害を軽減することは容易ではありません。上記災害による社会的な損失は極めて大きく、特に発展途上国においては、経済的発展の阻害に直結します。

     
     低頻度で大規模な地震・津波・火山災害を軽減する技術を向上させるためには、世界の様々な沈み込み帯での研究が不可欠です。沈み込み帯には多くの途上国が位置しており、そのような国では予算や人材の制約のために観測技術の導入が十分ではないなど、日本とは大きく異なる環境下にあります。そのような環境下で研究を推進するためには、対象国の実情にあった技術や手法の導入や開発が必要です。

     コロンビアでは、1906年のコロンビア・エクアドル超巨大地震(M 8.9)や1985年のネバド・デル・ルイス火山噴火による融雪泥流など、歴史的にも大きな地震・津波・火山災害を被ってきました。一方で、コロンビアは、世界的にも早い段階から地震観測網の衛星テレメータ化を進めるなど、南米大陸の中では先進的に地震・火山観測網を展開してきました。

    本課題では、途上国での研究協力の経験が豊富な研究者が参画するとともに、理学と工学の研究者が有機的な連携を図ることで、コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術の包括的な研究開発を行います。この課題で開発される技術は、経済的発展に伴い観測網等のインフラ整備が可能となる他の途上国においても適用可能なものです。よって本課題の成果は、様々な沈み込み帯での防災研究を行う機会を拡げるとともに、コロンビアだけなく他の途上国における日本のプレゼンスを高めることにもつながります。

          

研究目的

      
  •  本研究課題では、コロンビアの地震・津波・火山観測のインフラを最大限活用し、新たな機材の導入によりそれらの高度化を図ります。さらに、日本側の理学と工学の最先端の知見を用いて、地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発を行い、それらの技術をコロンビアにおいて自立的かつ発展的に運用することを目的とします。本課題では、モニタリング、モデリング、被害予測、情報伝達の4つのアプローチからこれらの技術の研究開発を行います。

    モニタリングにおいては、広帯域地震観測網のリアルタイムデータを用いた自動的な地震メカニズム解の推定とそれと連動した津波予測システムの開発を行います。さらに、ネバド・デル・ルイス火山およびガレラス火山の地震・空振・熱画像データ等を用いた火山監視システムの高度化を進めます。

    モデリングでは、GPS観測データを用いたナスカプレート(太平洋側)とカリブプレート(カリブ海側)の沈み込みに伴うプレート境界固着分布の推定とシナリオ地震を用いたボゴタ市における強震動シミュレーションを行います。さらに対象火山で取得される地震・空振・熱画像データ等を最先端の技術を用いて解析を行い、マグマシステムと噴火過程の解明を進めます。

    被害予測に関しては、ボゴタ市の強震観測網を用いたリアルタイム強震動被害予測システムの構築と津波シミュレーションに基づく津波被害想定を行います。

    情報伝達では、地震情報、津波情報、火山監視情報、強震動リスクマップ、津波被害想定等が一元的に閲覧できるポータルサイトを作成するとともに、クラウドおよびソーシャルメディアを活用することで、防災関係機関や一般市民に広く防災情報を周知するシステムの構築を目指します。

    上記の研究開発をコロンビアの防災関係機関と共同して行うとともに、留学生制度・他のJICA研修制度なども積極的に活用して、カウンターパート人材の基礎的研究能力の向上を図り、本課題で導入される技術の自立的かつ発展的な運用を目指します。

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