オイラー法における誤差はΔtに比例する(1ステップの誤差はΔtの二乗に比例するため).すなわち誤差を10分の1にしたければΔtを1/10にする必要がある.これは計算にかかる時間が10倍になることを意味する.これでは時間がかかってしょうがない.そこでΔtの2乗,4乗に誤差が比例するようなアルゴリズムが存在する.4乗に比例するものはルンゲクッタ法と呼ばれ広く用いられている.
ルンゲクッタ法に入る前に誤差がΔtの2乗に比例するアルゴリズムについて考えてみよう.
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(1) |
という微分方程式が与えられたものとする.タイムステップがΔtのとき,n+1ステップ目のyの値yn+1は,ynを用いて
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と書くことができる.ここでy''は二次の微係数で
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となる.2項出てくることに注意.これを用いると先ほどの式は
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のようにかきかえられる.ここでポイントは,我々はft,fyを知らないと言うことである.なので別の式でさらに書き替えないといけない.そのため式(8)が,以下のように書けるものと仮定する.
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ここでf1,f2は
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である.f2の中身に注意.f1,f2はそれぞれtnでの傾き,および傾きk1でΔt秒進んだとしたときのt+Δt秒後の傾きを表す.この二つの傾きを適当に重ね合わせることによりΔtの二乗の精度にすることができる.(11)式をテーラー展開すると,λ1,λ2,α,βの間の関係式が
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(8) |
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と求めることができる.求めるべき数が4つあるのに式が3つしか存在しない.なのでいろいろな値の組み合わせが
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(11) |
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といったようにありうる.いずれの場合も二次の精度まで正しく計算できる.つまり一ステップの誤差はΔtの3乗に比例する. 今回は(11)式を採用し,以下の(13)-(15)式で積分を行う.
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(13) |
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(14) |
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(15) |
式(13),(14),(15)を用いて先週の宿題(dy/dt=-y, t=0でy=1)をt=2まで解け.オイラー法の場合と精度を比較せよ.なお,プログラムを作成するときは関数副プログラムを用い,メインプログラムの中ではf(t,x)と書き,f(t,x)の具体的な形を関数副プログラムで定義すること.
先ほどのアルゴリズムの誤差はΔtの二乗である.これを4乗に高めたのがルンゲクッタ法である.
さきほどと同じ考え方を使うと,ルンゲクッタ法のアルゴリズムは以下のようになる.
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(16) |
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(17) |
式(16),(17)を用いて,ルンゲクッタ法を用いて dy/dt=-y, t=0でy=1 をt=2まで解け.3つの場合の誤差を比較せよ.
先ほどのルンゲクッタ法は多変数に拡張できる.例えば,x=x(t)とy=y(t)がそれぞれ
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(18) |
にしたがって進化する場合は,以下のようにアルゴリズムを組めばよい.
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(23) |
質点の投げ上げの数値シミュレーションを行う.今回解く方程式は以下の連立微分方程式となる.
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(24) |
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(25) |
式(25)で与えられる連立微分方程式を解け.t=0でx=0.D0, y=1.D0 とすること.Δt=1.D-2でt=2となるまで積分せよ.xが初期位置,yが初速度に対応する.yを変化させて結果がどう変わるか以下のアニメで観察せよ.
gnuplotを用いて簡単なアニメーションを作ることができる.先ほどの練習問題3の結果を可視化しよう.各タイムステップにおいて
write(1,*) 0.D0 , xと2つの数値を並べてファイルに書き出す(0.D0はxy平面上でx座標を固定するため).さらに,以下の内容でanim.txtというファイルを作成する.
set xrange [-1:1] set yrange [0:1] if (n>200) exit plot "ファイル名" every 1:1:n:0:n:0 with points pt 7 ps 2 pause 0.05 n=n+1 reread
gnuplotを起動し,以下のコマンドによってアニメーションを見ることができる.
gnuplot> n=1 gnuplot> load 'anim.txt'
プログラム中で,y=1.D0 としている箇所が初速に相当する. y=0.5D0, y=2.D0として計算をやり直し,アニメを再生してみること.yrangeの値を変化させると縦方向の範囲を変えられる.
練習問題3のプログラム,および初速を3通り変えた場合のそれぞれのt=2.D0におけるx座標を送付すること.