[1]ガウス分布
ある量を繰り返し計測すると,計測値は特定の分布をとることが多い.分布の中でも特に重要なものはガウス分布(正規分布)である.
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式(1)において,σ2は分散である.

ガウス分布の図(平均値=1,分散=1)
ガウス分布に近い計測値の例(新しい誤差論:古澤康和著より作成):
生徒の身長の分布.
セシウム原子から放出されるガンマ線の計測結果.横軸はチャネル数,縦軸は計数値.
スペクトル線の位置の平均値からのずれ.横軸は残差でμm単位.
[2]乱数の発生法
数値実験を行うと乱数が必要になる場合がある.コンピュータで乱数を発生さ
せる方法はいくつかあって,それについて学ぶ.なお,コンピュータで発生で
きるのは「真の」乱数ではなく疑似乱数である.
混合合同法
これは,
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によって順次乱数を発生させるものである.右辺で計算した値をμで割り,その余りを左辺に代入する.
練習問題1
3ビットの計算機において乱数列を発生させ,その周期についてしらべてみよ.
x
1=1とし,μ=4とせよ.a=3,b=1, a=2,b=1, a=1,b=3の場合についてしらべよ.
32ビット計算機では,混合合同法をもちいると
I=843314861*I+453816693
if(I.lt.0) I=(I+2147483647)+1
ran=float(I)*4.656612873D-10
をつかうことで[0,1)に規格化された乱数をつくることができる.
練習問題2
- 上のアルゴリズムを用いて乱数を発生させ,平均値,標準偏差を求めよ.乱数を発生させる回数を10, 100, 1000, 10000, 100000, 1000000と変化させてみよ.
- 解析的に平均値,標準偏差を求めよ.
- 乱数の和の分布がどのような形状になるか.
- 乱数をN個発生させ,その和を求めよ.
- (N個の乱数の和-N/2)/Nを求めよ.
- 上の計算を多数回行い,(N個の乱数の和-N/2)/N(以後xとする)を多数回求めよ.
- xの範囲は-1/2≤x≤1/2となる.この範囲を0.01刻みごとに区切り,(それぞれの区切りにxが入る場合の数)/(全体の場合の数)を求めよ.
- Nを1から10まで変化させて分布の形状が変化するか観察せよ.
練習問題3
整数の目盛がふられた定規を考える.原点(x=0)にいる人がランダムに隣の目
盛りにうつる.そのときの足取りを計算せよ.何通りも足取りを計算させてそ
の平均をとり,ステップ数Nと原点からの距離R=|x|をグラフに表し,その関数形
R=R(N)を推測せよ.
[3]モンテカルロ法
乱数を用いると多重積分を容易に行うことができる.例としてN次元単位球の体積を求めてみよう.
乱数をN個用意する.各乱数 xi (1≤i≤N) は0から1の値をとる.この乱数の組をW回生成する.生成した乱数のうち,
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を満たす組の数をwとすると,N次元球の体積は近似的に
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と求めることができる.一方で解析解は
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となる.
練習問題4
- N=2の場合について,W=10, 102, 103, 104と変化させて誤差の変化を観察せよ.
- W=104とし,N=1〜10までについて体積を算出せよ.体積はどう変化したか?