研究紹介 (橋口 未奈子)

  Keyword: 地球外有機物,隕石,質量分析

   地球外有機物の化学進化過程に興味があります。太陽系を含む宇宙空間は,様々な有機物に溢れています。これらは,太陽系形成過程において,多様なプロセスを経験し,複雑に進化してきたものです。これら有機物は,太陽系の起源や形成過程,また生命の起源に深く関係する重要な物質です。地球外有機物の化学進化過程を解明するためには,特に,微惑星 (始原小天体)上における流体や鉱物との相互作用でどのような反応が生じたのかを明らかにすることが重要です。私は,隕石などの始原的地球外試料の観察・分析や実験室における模擬実験をもとに,研究に取り組んでいます。
  • 論文,学会発表等
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  •  地球外物質中可溶性有機化合物の空間分布

    (*九州大学 奈良岡教授との共同研究)
       隕石など地球外物質には,アルコールや水などの溶媒に溶ける有機物 [可溶性有機物: soluble organic matter, SOM] (カルボン酸やアミノ酸,核酸塩基など)と,酸を含むあらゆる溶媒に不溶な有機物 [不溶性有機物: soluble organic matter, SOM]が含まれています。脱離エレクトロスプレーイオン化 (DESI)法を利用したイメージング質量分析により,これらが,隕石中に不均質に分布し,微惑星上の流体と有機物,鉱物との相互作用の記録を反映していることが明らかになっています (Naraoka and Hashiguchi, 2018; Hashiguchi and Naraoka, 2019)。また,小惑星リュウグウから持ち帰られた試料では,SOMの分布と二次鉱物との相関も見られ始めています。可溶性有機物ー鉱物との関連性から,初期太陽系内の微惑星における有機物,そして,鉱物や流体の化学進化を紐解いていきたいと考えています。

       
    関連論文
  • M. Hashiguchi et al. (2023)
  • H. Naraoka, M. Hashiguchi, Y. Sato, and K. Hamase (2019)
  • M. Hashiguchi, and H. Naraoka (2019)
  •  有機物ー鉱物ー流体反応の模擬実験

       地球外物質中の有機物は,既に複雑に化学進化した結果です。そこから約46億年前の初期太陽系内でどのような化学反応・化学進化が起こったのかを読み解くことは困難を伴うため,微惑星環境を模擬した実験も並行して進めています。有機物形成や分解反応における鉱物の触媒作用,また,近年隕石中から報告されている有機金属化合物 (Ruf et al., 2017, Hashiguchi and Naraoka, 2019, LPSC)にも注目しています。

       
     

     不溶性有機物 (IOM)の分子構造分析 

    (*名古屋大学農学部 福島教授,青木准教授との共同研究)

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