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「地球環境科学と私」第六十一回

2026.1.16

「地球環境科学と私」第六十一回は地球惑星物理学講座 城野 信一さんによる 突破口の見つけ方 です.


突破口の見つけ方 地球惑星物理学講座 城野 信一

この連載企画,2018年に第一回を開始し,今回で61回目となります.当時の広報委員長としてこの連載を企画し,第一回を執筆した私としては嬉しい限りです.今まで執筆して頂いた方々及び読者の皆さまには深く感謝いたします.今回は、まず最近論文として出版した研究を紹介しようと思います.なお,名古屋大学研究フロントラインにも掲載されたのでよろしければそちらもご覧ください。


地球環境科学専攻

アエンデ隕石に含まれるコンドリュールの顕微鏡写真.直径約1mm。三宅亮教授(京都大学)提供


地球に落下する隕石の多くは「普通コンドライト」に分類され,「コンドリュール」と呼ばれる直径1ミリ程度の球が多数含まれます.コンドリュールの主成分はカンラン石や輝石なのですが,形状が綺麗な球であるので岩石が一度溶融した上で細かく粉砕され,表面張力で球になったはずです.この研究では,加熱メカニズムとして微惑星の衝突に着目しました.これは昔からあったアイデアです.シミュレーションを行うといい具合に岩石が溶けることはわかりました.しかし分裂のメカニズムが何か必要です.どうすればドロドロの溶融岩石を細かく粉砕できるのか..息子のピアノ発表会をボーっと聞いている時に,微惑星に含まれている水が加熱時に急速膨張すれば良いのでは?と思いつき,コンドリュールの大きさを上手く説明することができました.


この例でお分かりのように,研究は謎を見つける過程とそれを解く過程とに分けることができます.しかし完全にオリジナルな謎を見つけることは稀だと思います.多くの場合,その分野で知られている謎に取り組むことになります.知られている謎は数多く存在するため,いかに重要で波及効果が大きい謎をいかに見つけるかがポイントとなります.


そして設定した謎を解くわけですが,私の場合はフィールドに行くわけでもなく実験をするわけでもなくほとんどの場合で微分方程式を解くことになります.方程式がかけてしまえばそれを解くのは機械的にできるため,方程式を設定するところが最重要となります.方程式を解いた結果が,当初のねらいと異なる場合もよくあります.方程式の解き方が間違っているのが一つの可能性ですので,まずは方程式を解いた計算用紙や,コンピュータに書いたプログラムをよくチェックします.


計算方法が正しいと確認されたとすると厄介なことになります.この場合、問題設定自体が不適切だったことになります.最悪の場合,全てお蔵入りということになりかねません.莫大な時間が無駄になってしまいます.我々は一応プロなので,そうならないように事前にあたりをつけて,見込みがあると判断した場合だけ研究を開始します.しかし,必ずしも事前の見込みが正しいとは限らないのが難しいところでかつ面白いところです.


さて,こちらのねらいと違った結果が出てきたらどうするのでしょうか?先ほど述べた通り計算のやり方は正しいので,得られている結果はその問題設定に対しては妥当なものです.なのでこの結果はそれなりに意味があるはずなので,生かさない手はありません.どうすれば生かせるか?可能性の一つはねらいを変えることです.その結果に合うようにねらいを設定しなおす.しかしこの作戦が上手くいくためには,設定しなおしたねらいでもインパクトがある必要があります.もしねらいを設定しなおしたとしても十分なインパクトがあればめでたしめでたしです.


設定しなおしたねらいが面白くない場合はどうすれば良いでしょうか?最も良く遭遇するのは残念ながらこの場合です.うわー,まずいまずい..全て無駄になる..と一瞬思ったりしますがこういう局面が最も謎解きが盛り上がる時間です.今までの結果は正しい.しかし私のねらいとは違う.何かが欠けている.その要素は何だ?ここで研究は一度停止します.それで色々考える.


このような場合,考え初めてすぐに突破口が見つかる場合はまずありません.何か全く別のことをしている時に浮かんでくることが多い.冒頭の例はピアノ発表会でした.大学院生の頃は,よく銭湯に行っていたので風呂に入りながら考えました.最近は自転車に乗るのが趣味なので、自転車に乗っている時に突破口が浮かぶことが多いです.名大から名駅まで行く途中,吹上をすぎたあたりでなぜかよく浮かぶ.このあたりは若干の下り坂になっていて適度にリラックスするためでしょうか.いずれにしろ突破口を見つけるための秘策はありません.ただ,突破口を見つけた瞬間,またその突破口からいろいろな問題がドミノ倒しのように次々と解決されていく時間はこれ以上ない喜びです.





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