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「地球環境科学と私」第四十回

2023.10.16

「地球環境科学と私」第四十回は生態学講座 依田 憲さんによる すべてはつながっている です.


すべてはつながっている 生態学講座 依田 憲

15年ほど毎年、日本海で繁殖するオオミズナギドリ(写真1)という鳥に小型の行動記録計を装着して、海上での移動戦略を研究しています。この鳥は体重500gほどですが、日常的に数百キロメートル飛んで移動できる、すごい鳥です。改めて言うまでもなく、野生動物の行動は、風や気温などの環境の影響をさまざまな形で受けます。特に、エサであるカタクチイワシの資源量や分布はオオミズナギドリの移動に影響を与えると予想されます。そこで、生態学講座の学生が、鳥の移動と日本海の各漁港の漁獲量の関係を調べてくれました。すると意外なことに、オオミズナギドリのエサではない大型魚シイラの漁獲量がオオミズナギドリの採餌行動と強い相関があることがわかりました。イワシを食べる両者は競争関係にあり、シイラによってオオミズナギドリが餌場から追い出されている可能性が見えてきました(写真2)。


このように、関係のなさそうなものが結びつくのはエキサイティングです。ときには思ってもいなかった分野同士がつながることもあります。我々は普段、野生動物に焦点をあてて行動戦略を研究していますが、動物の行動データを詳細に記録すれば、そこから環境情報を引き出せることに気付きました。具体的には、飛んでいる鳥から得られたGPS経路から洋上の風を推定したり、海面で休んで漂流している鳥の経路から海流を推定したりする手法を構築しました。さらに、このように鳥に測ってもらった環境情報を気象学者や海洋学者にデータ同化してもらうと、風や海流の予測精度が上がることも示せました。現在は、台風の目に向かって飛ぶオオミズナギドリ(https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2022/10/post-343.html)の飛翔データから推定した風向・風速をデータ同化し、台風予測に活かす研究を進めています。


2007年に本研究科に着任したときは、動物行動学というニッチな分野に身を置く私が、分野融合的な組織でやっていけるのか不安だったのですが、なんてことはない、すべての現象や分野はつながっていて、どこにでも行けることに気付いたのでした。最近は地球惑星科学科や地球環境科学専攻の学生に対して、鳥の巣が密集する繁殖地からドローンを上空数百メートルまでゆっくり遠ざけて撮影した映像を見せながら、小さな鳥の行動戦略を知るためには、海も空も地球も知らないといけないでしょう?と嘯いています。


地球環境科学専攻

写真1:オオミズナギドリ(撮影:後藤佑介、生態学講座准教授)

地球環境科学専攻

写真2:オオミズナギドリにビデオロガーを装着して鳥の前方を撮影した。一回の潜水採餌行動(a→eの順で時間が進む)。背中に装着しているため、撮影者の姿は映っていない。(a)水深数メートル。奥に見える魚群を目指して羽ばたいて泳ぐ。大型魚のシイラや他のオオミズナギドリが多数映っている。(b)魚群に近づく。上から他のオオミズナギドリが魚群に迫っている。(c)(d)魚群に最接近。(e)海面に浮上する。潜り始めた他個体とすれ違う。


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