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「地球環境科学と私」第三十九回

2023.8.8

「地球環境科学と私」第三十九回は地球化学講座 古賀 亮一さんによる 8億キロメートル彼方の火山噴火を想像して です.


8億キロメートル彼方の火山噴火を想像して 地球化学講座 古賀 亮一

はじめまして、3年前から研究員として地球化学講座に在籍しています古賀亮一です。ここに来る前は東北大学理学研究科の地球物理学専攻に大学院生として所属していました。これまで木星衛星イオやエウロパの研究をメインに進めてきました。研究に至った経緯をここで簡単に紹介しようと思います。


私は昔から研究者気質なところがあったらしく、小さい頃は人よりも時計や図鑑などに興味があったようです(今となっては実際の研究者はコミュニケーション能力が重要であることを思い知らされているのですが)。その後、中学生くらいからテレビなどを見て宇宙に興味を示すようになって、いつか宇宙飛行士になって宇宙や月面に行きたいなと思っていました。その影響があって、大学時代から宇宙に何らかの形で関われる仕事に就きたいなと考えていました。


私が4年生であるときにちょうど宇宙望遠鏡「ひさき(SPRINT-A)」*1が打ち上げられ、木星とイオのプラズマトーラスを観測していました。そのころ色々太陽系について調べていたところ、エウロパには氷の地面の下に海があり、もしかしたら生命がいるかもしれないということを知りました。その興味の延長線上で木星に関係する研究をしたいとお願いし、「ひさき」のデータを解析させていただきました。すると、データから酸素原子の発光らしき特徴が見えたので、もしかしたら今まで観測されていないエウロパのプラズマトーラス起源のものではないかと期待していました。実際にはエウロパではなく、イオの火山噴火ガスの起源の原子発光であることが判明しましたが、この出来事が今までのイオの研究の出発地点となったのです*1。大学院生時代はイオのプラズマトーラスの研究が盛んなコロラド大学などの研究者や大学院生と交流があり、何度か海外出張したりして刺激を受けました。博士号の後半ではイオのもっと近くの環境を見たいと思い、ALMA電波望遠鏡のアーカイブデータの解析も行ってみました。



東北大学で博士号を取得した後、すぐに地球化学講座の平原研究室に移籍しました。私は学生時代、望遠鏡観測データの解析しか経験がありませんでした。しかし、平原研究室には様々な実験装置があったため、新たに天体の表面環境を模擬した実験や赤外分光測定に挑戦してみました。実際に実験に着手したところ、チャンバーなど一から製造する装置も多く、配線の断線や真空リークなどさまざまな問題に悩まされました。しかし、紆余曲折の末、測定データを取得することができました。今後、新たな望遠鏡観測の提案に使えるように実験と測定を積み重ねていくつもりです。振り返ると、自分は数年でメインの研究テーマを変えて、様々な手法を身につけるスタイルで取り組んでいるなと思っています。今はまだ木星衛星以外の研究からあまり抜け出せていないですが、今後は太陽系内外の様々な天体の研究を行うつもりです。


実は今までに至るまでに何度か民間企業などに就職することも何度か考えたことがあります。実際に自分の大学院生時代のメンバーは衛星の運用や製造に進んだ人たちも何人もいました。しかし、自分には未だ明らかになっていない自然現象を解明することの方があっているかなと思い、今まで研究の道を進んできました。今後研究成果を出して天体の地質活動の解明や生命存在可能性の議論まで進めたらと思っています。


*1 「ひさき」の研究成果の簡単な紹介は以下のISAS newsに載っています。
https://www.isas.jaxa.jp/feature/special_issues/hisaki/

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実際の霜生成実験・赤外透過測定の様子。


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