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「地球環境科学と私」第三十四回

2022.3.5

「地球環境科学と私」第三十五回は地球史学講座 藤原 慎一 さんによる こじつけから生まれた、自分にハマる研究テーマとの出会い です.


こじつけから生まれた、自分にハマる研究テーマとの出会い 地球史学講座 藤原慎一

はじめに…人は自分の成功/失敗体験でしか物事を語れないと思っていますので、ここに記すことはあくまで一つの事例ということをご承知おきください。


名大の博物館で機能形態学を専門に研究している藤原です。私自身は学生時代に、絶滅した動物がどのような運動適応をしていたかを復元するというテーマに至り、これを現在も続けています。有り体に言えば、恐竜が生きていたとき、どんな姿をしていたのか、どんな動き方をしていたか、そして、それが系統の進化の中でどのように多様化していったかを知りたいということですね。


研究者人生の中で、どんな研究テーマを作り上げていけるかはとても大事です。はじめは指導教員から研究の種(たね)をいただくこともあるでしょうし、自分自身が見聞きしてきたことの中から芽生えた小さな思いつきがその種になる場合もあるでしょう。その研究の種を自分自身にハマるような「テーマ」に育てていけるかどうかが大事です。私自身の場合、うまい具合に(時には強引に)、自分が強い興味関心を持つ要素や得意な技能を研究に取り込んでいくことができたのかな、と思っています。研究を続けていくうちに、周囲の研究者と比べて自分が相対的に秀でている領域、そして苦手とする領域を正しく自覚していく過程が、学生時代に経験した大事な段階でした。そうして、次第に自分のカラーを作り上げていき、博士課程を修了する頃にようやく自分の代名詞たる研究テーマが出来上がっていったように思います。


ただ、最初からピタリとこのテーマに辿り着いたわけではありません。昔から化石少年だったという古生物屋はたくさんいます。ただ、残念ながら私は昔から「恐竜」が好きだったのですが、どちらかというと図鑑に描かれた復元画が好きなのであって、これを「化石」として捉える素養がないまま育ちました。大学では、なんとか地学科に所属することができ、古生物学に一歩足を踏み入れることになります。しかし、そんな下地しか拵えてこなかった私は露頭の前では明らかな劣等生。また、いきなり「化石」と相対しても、何かが見えて来るはずもありません。幸いにも、大学院からは恐竜の化石を扱えることになったのですが、これまた化石の骨だけを見てもさっぱり何も見えてこず、ぼ~っと骨を眺めるだけの日々を過ごし、正直なところ、博士課程への進学は半ばあきらめていました。


ところが、幸い、私が所属した研究室は、絶滅動物を「石」としてではなく、「生きた動物」として見ていくという視点を大事にしていました。次第に、昔から夢中になっていたのは、動いている動物や昆虫を見たり捕まえたりすることだったことを思い出し、絶滅動物を無理に「石」として観る必要がないってことに気付きます。高校時代からは相撲を観るのにハマって、浪人中に時間があったので、相撲史や力士の体つきと得意技をたくさん調べまくっていたのですが、ある時、その時の筋肉の知識を恐竜化石に当てはめてみたらどうなるだろう?と思い立ちました。また、子どもの頃に夢中で作っていたZOIDSというゼンマイ仕掛けで動くギミックを施した動物型の玩具を思いだし、パーツの形の違いが動物の動きの違いを生むという発想を、絶滅動物に当てはめられないかと思い至りました。急に、今まで幼少期から培ってきた私の「素養」が次々とリンクしていき、これから何を研究していけばよいか目の前の視界が開けた経験をしたのが、修士2年の10月頃で、ギリギリ、博士課程進学を諦めずに済みました。昔から絵を描くことと、粘土で塑像することは人並み以上に得意だったなぁ~。そういえば、数学の図形とか、カタチに対する感性は悪くないかも。そうだ、骨のカタチからその絶滅動物の生きていたときの姿を復元することをテーマにしよう、と相成ったわけです。そこからは、骨のカタチを見れば、その動物がどんな適応をしていたかについての予測がつくようになり、じゃぁ、その予測を検証していこう、という研究の型が出来上がっていきました。


自分の場合は、たまたまこんな研究人生を歩んでくることができましたが、これから研究者を志す皆さんにも、様々なテーマとの出会いがあると思います。一見、関係ないと思えるようなことでも、自身の趣味や子供の頃の記憶と強引に結びつけてみてはどうでしょう。それがうまくハマった時、研究の展望も大きく広がるきっかけになるかもしれません。




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