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「地球環境科学と私」第二十六回

2021.2.18

「地球環境科学と私」第二十六回は地球惑星物理学講座 岡村 裕之さんによる 私のルーツ「生命の起源を知りたい」 です.


私のルーツ「生命の起源を知りたい」  地球惑星物理学講座 岡村 裕之  

この記事を読んでいる皆さんは,将来どのような進路に進むべきか考え,自分がやりたいことは何なのか悩んでいる最中だろうと思います.今回は,私が行っている研究内容と,今の研究をするに至った経緯をお話しし,皆さんの進路選択の一助となればと願って書きました.


まず研究内容をお話しします.私は現在,地球環境科学専攻地球惑星物理学講座の城野信一准教授のもとで,球状鉄コンクリーション(図1)という不思議な球の形成過程解明に繋がる研究を行っています.球状鉄コンクリーションとは,大きさ数cmで表面は酸化鉄の殻で覆われ,内部は砂が詰まっている,ナバホ砂漠やゴビ砂漠に存在する球体です.実はこれとよく似たものが,NASAの火星探査ローバーOpportunityによって火星のメリディア二平原でも発見されました.この物体の形成過程を解明することで,形成当時の周辺環境を推定出来ます.つまり,火星の古代環境を知る手掛かりになる物体だということです.過程解明には,鉄殻の形成時間情報が不可欠ですが,現状,未解明です.


そこで,私が行っている研究は球状鉄コンクリーションの殻の形成時間を解明し,最終的に火星の古環境に制約を与える研究です.砂漠の砂に見立てたガラスビーズとCaCO₃粉末を用いて人工鉄コンクリーション作成実験を行い,カメラやX線顕微鏡で解析し,殻の形成時間を推定する研究を行っています.研究成果は,火星の古環境に制約を与え,ひいては生命が存在できる環境だったかどうかを解明するための検討材料に成り得るものです.


次に,研究をするに至った経緯についてです.私は生命の起源を知りたいという思いから,今の研究に取り組んでいます.そう考えるようになったきっかけは,小学4年生のころ,図書室に置いてあった科学雑誌Newtonと出会ったことです.本には,宇宙の壮大さと,その始まりについて,インフレーション理論を用いて解説されていました.初めて読んだ時,その始まりについて自分も将来研究したいと思ったことを覚えています.同時に,生命は一体どこから来たのかを知りたいと考えるようになりました.


少しでもその答えに近づきたいとの思いから,小学5年生から中学生まで,宇宙少年団YACという,宇宙教育推進団体に所属しました.中学~高校は自分で科学雑誌を読んで,宇宙や生命の起源に関する情報を調べていました.大学の卒業研究では,当時の指導教員である道上達広教授のもとで,生命の起源解明につながる,はやぶさ2プロジェクトに参加させていただきました.研究を進める中で,地球の生命の起源を解き明かすヒントは,小惑星だけでなく,火星にもあるのではないかと考えるようになりました.


さらに丁度その頃,アメリカの実業家イーロンマスクさんの民間ロケット会社SpaceX社が,NASAと協力して火星に人類を送る計画を発表していたり,月の周回軌道上に「ゲートウェイ」という人工コロニーを建設して人類の火星進出の足掛かりにする計画が発表されたりと,世の中の目は火星に向いていました.そのような世間の流れもあり,修士課程で火星の研究をするのも面白そうだなと考えるようになりました.そんな中,火星の古代環境が解明でき,かつ生命の存在についてもわかるかもしれないという今の研究を知り,現在に至るというわけです.


以上のような背景から,私は今の研究に取り組みました.単純に,自分が興味を持っていることを研究できると,研究生活は楽しいものになると思います.子供のころのワクワクや知りたいという純粋な心を思い出して,ご自身の進路を決められると良いかと思います.最後まで読んで頂きありがとうございました.皆さんが本当に進みたい進路に,進めることを願っております.




地球環境科学専攻

球状鉄コンクリーション(ナバホ砂漠)の一例

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