トップページ > 新着情報 > 新着情報詳細

新着情報

「地球環境科学と私」第二十二回

2020.9.14

「地球環境科学と私」第二十二回は地質・地球生物学講座 志村 侑亮さんによる 日本一のフィールドジオロジストを目指して です.


日本一のフィールドジオロジストを目指して 地質・地球生物学講座 志村 侑亮  

私の夢は,「日本一のフィールドジオロジスト」になることです.私は,高校2年生の時に,地元の福島県で東日本大震災を経験しました.震災を経験し,自然災害にはしばしば地震や火山噴火といった地質現象が密接に関係していることを知り,地質学に興味を持ちました.また,自分の生涯を通じて,少しでも人や社会のためになる仕事がしたい,地質学分野の研究進展に貢献できる人材になりたいと思い,地質学の研究者を志すようになりました.


私は,沈み込み帯におけるプレート境界域の浅部で形成される付加体,および深部で形成される高圧型変成岩類を研究対象としています.付加体と高圧型変成岩類は,プレート境界域浅部・深部で形成される際に,強い変形を受け,面構造,線構造,褶曲,および断層など様々な地質構造を作ります.これらの変形構造がプレート境界域の浅部から深部にかけて,すなわち深度に応じてどのように変化していくのかを解明することが私の研究目的です.上記を解明するためには,様々な深度で形成された複数の地質体を対象に,野外で変形構造の特徴や構造姿勢データの把握を行う必要があります.そのため,私はこれまでに,複数の地質体を網羅した東西50 km×南北32 kmの範囲において,約400日の野外調査を実施してきました(図1a).私のオリジナリティは,野外で地質構造を解析し新たな知見を見出せる所にあり,冒頭で記している通り,私はフィールドジオロジーに立脚した研究ができる日本一の研究者になりたい.


野外調査では,しばしば珍事件が起きます.主に調査は新鮮な露頭が観察できる河川やその支流で行いますが,河川の水深が深く泳いでしか渡れなかったことや(図1b),せり立つ崖を越えられない・降りられなかったこと,橋が崩落しており調査地域までたどり着けなかったこと(図1c),熊と遭遇したこと,不審者と勘違いされて警察に通報されたことなどなど.これら珍事件は,普段の生活では得られない貴重な経験であり,私にとって新鮮で,野外調査の醍醐味であるとも思っています.また,調査地域での人との出会いも一つの醍醐味です.卒業研究で野外調査を始めた当初は,宿に泊まるお金がなかったことから車泊やテント泊をしながら調査を行っていました.ある時,知り合ったご夫婦の方が「車で寝とんやったら,うちに泊まりや!」と言って下さり,その後の約5年間,野外調査の際には居候をさせていただくことになりました.今となっては,調査地域は私の第二の故郷であり,そのご夫婦は私にとっての調査地域でのお父さんとお母さんです(図1d).


野外調査は,研究だけでなく,私を強く大きく成長させてくれるものであり,私に出会いを与えてくれるものであり,私の生活の一部です.まだまだ知識・経験・勉強不足で,野外において解釈ができない地質現象にたくさん出会い,その度にもどかしい気持ちになります.向上心を常に持って,今後も野外調査のスキルを磨いていきたいです.また,私が研究者を志すきっかけとなった地震や自然災害の防災についても貢献できるような研究者にいつかなりたいと考えています.


地球環境科学専攻

※図1のキャプション…(a)志村ほか(2019, 地質学雑誌, 125, 349–365)より引用・加筆.野外調査により作成したルートマップ.(b)強い変形を受けた岩石の様子.泥岩基質中に玄武岩レンズを含んでいる.(c)河川の水深が深く泳いで渡った様子.(d)橋が崩落し調査地域にたどり着けなかった様子.(e)右から左へ,筆者,地元の方,お世話になったご夫婦,筆者の弟.


  • 地球環境システム講座
  • 地質・地球生物学講座
  • 地球化学講座
  • 地球惑星物理学講座
  • 地球惑星ダイナミクス講座
  • 地球史学講座
  • 生態学講座
  • 大気水圏講座

学生の皆さんへ

学科のご案内

リンク

名古屋大学 NAGOYA UNIVERSITY

名古屋大学大学院 環境学研究科

名古屋大学理学部

大気水圏科学系

名球会

名大地球ツイッター

名大地球フェイスブック