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「地球環境科学と私」第十八回

2020.3.5

「地球環境科学と私」第十八回は地球惑星ダイナミクス講座 木村洋さんによる 大学院での研究生活 です.


大学院での研究生活 地球惑星ダイナミクス講座 木村洋 

私は、地震間におけるプレート境界面の固着状態を、陸と海底の地殻変動観測データを用いて推定する研究に取り組んでいます。地震は、プレート運動によってプレート境界面の固着領域に蓄積した歪を解消する現象であり、この歪による地表(海底)応答が、地殻変動観測によって捉えられます。よって、地震間の地殻変動を詳しく解析することによって、プレート境界面での固着分布を知ることができれば、将来どこで、どのような地震が起こるのかを予測することが可能になります。


私がこの研究に取り組み始めたのは、博士前期課程に入ってからです。きっかけは、現在の指導教官である田所先生の論文を読んだことでした。この論文は、熊野灘の海底地殻変動観測データから、プレート境界面の固着状態を推定するというものだったのですが、それまでの私には、「地震学=地震波形を解析する学問」という思い込みがあったので、海底の地殻変動データが地震発生の理解に重要な役割を果たすというのを知ったときには大きな衝撃を受けました。このようにして海底地殻変動観測と、そのデータを用いた地震予測の研究に興味を持った私は、博士前期課程から田所先生の研究室に所属し、現在の研究を始めることになったのです。


研究は、初めてのことがほとんどなので、大変苦労します。私の場合、悪天候時の海底地殻変動観測で船酔いしたり、3000行を超える計算プログラムを書いたり(もちろん、大量のバグ修正が付きまとう!)・・・。また、得られた結果を論理的に解釈するには、地震学のみならず、地質学や地球化学、物理、数学など、非常に幅広い知識が必要となるので、たくさん本や論文(ほとんどが英語で書かれてある)を読まなければなりません。何かの修行なんじゃないかと思うこともあります。


しかし、大学院での研究は苦労や辛いことばかりではありません。私にとって研究の楽しみは、世界で誰も明らかにしていない「未知」のことを自分の手で解明できるということです。この感覚は、「既知」の事実だけを教わる小・中・高・大学学士課程の授業では味わえないと思います。もちろん私は、まだまだ経験不足なので、自分一人の力だけで研究を成功させることは困難ですが、幸いにも私が所属する地球惑星ダイナミクス講座では、指導教員の田所先生をはじめ、どの先生も惜しみなく力を貸してくれます。また、学会発表等に参加することで、自分の研究成果を他大学・研究機関の方たちと共有したり、時にはアドバイスをもらうことができます。さらに、海外の学会発表に参加することによって、日本では主流でない手法等を目にしたり、英語で議論をしたりと、とても良い刺激を受けることができます。

博士前期課程から開始した研究生活も4年が経過しようとしています。現時点では、この先どのような道を進むのかはまだ不透明です。できれば、これまでの研究で得た知識や技術を活かし、地震防災といった形で実社会に貢献できると幸いです。それを可能にするためにも、より多くの知識を身に付け、これからも一心不乱に研究に打ち込みたいと考えています。



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