私たちの研究室で日頃使われている浮遊性貝類の愛称です.海の中をプカプカ浮かんで暮らす様をイメージしてつけられました.ここではどのような種類がいるのか?どのような生態か?について簡単に説明します.
Puka-Pukaとは?
Spoel et al., 1997
【異足類と翼足類の分類と生態】



・分類

異足類:
Atlantidae(クチキレウキガイ科),Carinariidae(ゾウクラゲ科)およびPterotracheidae(ハダカゾウクラゲ科)の3科からなっています.
Atlantidaeは小型の平巻き状の殻を,Carinariidaeのほとんどは小型の烏帽子状の殻を持ち,Pterotracheidaeは殻をもちません.


有殻翼足亜目の翼足類:
Euthecosomata(真殻下目),Pseudothecosomata(擬殻下目)からなり,前者はLimacinidae(ミジンウキマイマイ科),Cavolinidae(カメガイ科)などから,後者はPeraclididae(アミメウキマイマイ科),Cymbuliidae(ヤジリカンテンカメガイ科),およびDesmopteridae(コチョウカメガイ科)からなっています.Limacinidaeは小型の左巻き殻をもち,Cavolinidaeは小型の円錐状,筒状,螺旋状,三角錐状,亀の甲羅状など多様な殻を持ちます.擬殻下目の中ではPeraclididaeのみが石灰質の殻(小型の左巻き)をもち,ほかの科は軟骨様の擬殻をもつか,全く殻をもちません.





裸殻翼足亜目の翼足類:
6科からなります.どの科の種も殻をもっていません.オホーツク海名物「流氷の天使」の愛称をもつクリオネ(Clione limacina)はその代表的なものです.


 
Spoel et al., 1997



・生態


異足類と翼足類の多くは,外洋の表層‐中層水に生活し,多くの種は汎世界的な地理分布を持っています.暖水域に生息するものが圧倒的に多く,クリオネのように冷水域に生息する種類は数が限られています.異足類と裸殻翼足亜目の種は捕食者で,異足類や翼足類を含む大型プランクトンや幼魚をエサとしています.一方,有殻翼足亜目は有孔虫,珪藻,ココリスなどの小型プランクトンを濾過するように食します.

【現世の浮遊性貝類の分類】

浮遊性貝類は終生浮遊生活をする腹足類(巻貝類)で現生種は4つの分類群に属しています.

1)アサガオガイ科すべての種類

2)異足類(=ゾウクラゲ上科)のすべての種類

3)翼足類(=有殻翼足亜目と裸殻翼足亜目)のすべての種類

4)裸鰓亜目の一部の種類




異足類と翼足類という用語は長年にわたって使用され,現在でも分類学や生態学などの分野ではなじみふかいものであるため,ここではこれらの用語を使っています.私たちの研究室では
異足類と翼足類(のうちの有殻翼足亜目)の化石をおもな対象としています.
浮遊性貝類の分類