城野信一の研究

いままでやってきた研究, いまやっている研究

  1. 微惑星はどうやってできたのか? (現在)

    分子雲コアが重力的に収縮することで星が形成される. 分子雲コアは回転しているため, 原始惑星系円盤なるものが星の周りにできる. この円盤のなかで惑星が誕生することになる.

    分子雲はほとんど水素を主体としたガスで構成されている. しかし質量比で1% ほど, 「ダスト」と呼んでいる固体成分も含む. H2Oをはじめとする氷, 珪酸塩鉱物, 有機物の混合物である. その大きさは0.1ミクロン程度でタバコの煙よりも小さいくらいである.

    惑星の材料はこの「ダスト」である. どうやって0.1ミクロンの「ダスト」が1000kmをこえるような惑星まで成長したか? を明らかにすることが惑星形成論のメインテーマとなる.

    1kmサイズまで成長すると、その後は相互重力で引っ張りあって原始惑星、さらには惑星まで成長することが最近の研究で明らかになっている。

    しかし、この「微惑星」自体の形成過程がいまだ不明である。そこで私は微惑星形成過程を明らかにすることを目標に現在研究を進めている。

    着目したプロセスは、ダスト微粒子集合体の「焼結」である。焼結が進行すると、分裂が起こることが古くから知られている。ダスト微粒子集合体はガス抵抗によって太陽に向かい落下してゆく。落下すると温度が上昇するので焼結が進行する。焼結が進行すると分裂がおこり、ダスト微粒子集合体の大きさが大幅に低下する。するとガス抵抗の効果が大きくなり、さらなる落下が止まる。落下が止まるとその場所にダスト微粒子集合体は溜ることになる。ダスト微粒子集合体が溜ると、重力的に不安定になり微惑星が形成される。

    この仮説を検証するため、ダスト微粒子集合体の焼結の数値シミュレーションを行った。まずは簡単のため、微粒子がチェーン状に並んだ形状でシミュレーションを行ったところ、見事に分裂することが示された!(上のアニメーション)

    現在は、さらに複雑な形状のシミュレーションに取り組んでいる。また、大学院生と共同で、分裂が起こる領域に落下してくるダスト微粒子集合体のサイズ分布を求める数値シミュレーションを行っている。

  2. ダストアグリゲイトの衝突(ポスドク)

    原始惑星系円盤に浮かぶ「ダスト」が相互に衝突, 合体をくりかえして大きくなることが惑星形成過程の少なくとも初期のステージでは重要であることが明らかにされている. すると生まれる疑問は「ダストが衝突してほんとに合体するのか?」 である.

    そこで私はSPHと呼ばれる流体シミュレーションコードを用いて, ダストの集合体, ダストアグリゲイトの衝突のシミュレーションを行なった. その結果, ダストアグリゲイトの強度が特定の条件を満たしていないと衝突したときに合体できないことがわかった.


    図:ダストアグリゲイトの衝突シミュレーションの結果.

    ダストアグリゲイトの強度は化学組成と温度によって大きく変化する. 原始惑星系円盤の化学組成, 温度は場所によって変化している. したがって, 原始惑星系円盤の特定の場所でのみダストアグリゲイトの強度がちょうどいい値となり, ダストアグリゲイトが成長できることになる.

    ダストアグリゲイトが成長できた領域と, 現在の惑星の位置, たとえば地球の場所にはこのような関係があるのかもしれない.

  3. 地震発生過程 (2004-2005年)

    断層面にはしばしば「シュードタキライト」と呼ばれる岩石が発見される. 組織を観察すると, シュードタキライトは熔融したことがわかる. これは断層面において摩擦熱で加熱を受けたものと考えられている.

    摩擦の度合は通常は表面の荒さできまる. しかし面の間に流体が挟まった場合はもはや表面の凹凸は意味がなくなる. この場合は流体の粘性が面の運動を特徴づけることになる.

    京都大学の嶋本教授のグループでは, 岩石を高速ですべらせることにより実験的にシュードタキライトを形成し, また同時に摩擦力の計測をおこなっている. その結果, はじめは摩擦力が上昇し, ある時点からなだらかに低下することが明らかとなった.

    嶋本グループがさまざまな解析を行なったところ, 次のような段階があることが明らかとなっている.

    1. 岩石表面の凹凸が摩擦により削られる. その結果として摩擦係数が低下する.
    2. 摩擦熱は表面の凹凸に集中的に発生する. 局所的に岩石が融解し, メルトパッチを形成する.
    3. パッチにおおわれた部分は抵抗力が増加するため, パッチの成長とともに摩擦係数が上昇する.
    4. パッチがすべり面の全体を覆い, 層をなす. ここで摩擦係数がピークになる.
    5. メルト層内部で発生する熱のためメルト層の厚さがじょじょに増大する. それとともに摩擦係数が低下する.

    修士の里見君(04年卒業)といっしょに, ステージ5の数値シミュレーションを行ない, 実験をよく再現することができた.

  4. 始源天体の物質進化(博士課程)

    宇宙科学研究所にいたときに, 山本哲生助教授(現北海道大学低温科学研究所教授)と知合いになってよくしゃべるようになった. それが縁で博士過程から北大にいって理論をすることになる.

    北大でははじめから微惑星をやろうと思っていた. そこで粉の力学的性質についていろいろ調べた(研究項目1につづく). おそらくこれも粉のかたまりであると思われる彗星核の熱的進化にその結果を利用して博士論文をかいた.

  5. 高速衝突実験(4回生-修士課程)

    4回生と修士の間は藤原さんについて高速衝突実験をやっていた. 直径7mmの弾丸を速度4km/s程度まで加速できる巨大な鉄砲で物を壊して, 小惑星の起源などを議論する実験である. 高速衝突の際の角運動量の移送効率(卒業研究:京大), 高速衝突によるアミノ酸合成実験(修士:宇宙科学研究所)をやった. 修士の時は分析をしに横浜国大にもちょくちょくいって, そこの学生と遊ぶのも面白かった.