桂木洋光(かつらぎひろあき)  [もう少し見やすい最新版はこちら]


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名古屋大学教員プロフィール(←ここに桂木に関する基本的な情報はほぼ網羅されています)

名古屋大学大学院 環境学研究科 地球環境科学専攻 (理学部 地球惑星科学科) 地球惑星物理学講座 准教授
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 理学館 203-2号室  Phone/Fax: 052-789-4580
katsurag "あっとまーく"eps.nagoya-u.ac.jp


研究内容や興味の対象


進学を考えている学部生や高校生向けのメッセージ

(あくまで私個人の考え方を述べたものであり講座や専攻・研究科全体としてのコンセンサスではないのでご注意を!)
(本当は最も大事なポリシーについてなのでこのページの先頭に掲げるべきと思いながらも長いのでこの辺に...)

一般向けに書いたもの


モットーとか



粉体の基礎

grains  sand  Avalanche  pressure  AE  toys
[写真・絵は左からそれぞれ,ガラスビーズ,砂粒,粉体雪崩実験系,粉体圧力伝播実験系,AE計測実験系,および粉体おもちゃ.]

 「粉体」とは,つぶつぶの集合です.このつぶつぶの各粒子が衝突したときの跳ね返り係数が1より小さく,接触しているときに摩擦がかかる場合が通常考えられる粉体です.1より小さな跳ね返り係数や摩擦はエネルギーの散逸ということを意味します.跳ね返り係数も摩擦も中学・高校の理科で学習数する項目ではありますが,実はその詳細な挙動は複雑で未解決な事項も多く残っています.粉体はときには流体の様に流れ,ときには固体のように固まり,その挙動は実に多彩です.さらに,液体と混ざったりした場合には手に負えないくらい妙な(面白い!)性質を示します.また,粉体は明らかに地球や惑星を構成する基本要素の一つであり,その挙動を正しく理解することは地球惑星科学においても欠かせない課題と言えます.そんな粉体の性質を白日の下にさらすために以下のような研究に取り組んでいます(もしくは取り組みたいと思っています).

衝突・クレーター

impact  dropimpact  flower  diinstr DI1 DI2
[写真は左からそれぞれ,固体弾の粉体への衝突,液滴の粉体への衝突の瞬間例,液滴と粉体衝突によるクレーターの例,液滴粉体衝突実験系,液滴と粉体衝突の高速撮影画像1,および同2.]

 月の表面には衝突で出来たとされるクレーターが多数あることが知られています.そのクレーターの出来方を解明することは月(やその他のクレーターを持つ天体)の素性を理解するために必要不可欠な要素と言えます.宇宙空間で起こっている衝突を模擬するためには通常はとても高速な衝突を実現することとなりますが,私達は極めて低速で柔らかいものを衝突させたりすることによりクレーターの形状を議論していたりします.これまで取り組んだテーマや興味のある対象は以下のようなものです.  実験室での低速衝突実験の結果は地球惑星科学的スケールの現象の理解に役立つでしょうか?これは難しいところではあるのですが,例えば粉体と液滴の低速衝突によって出来たクレーターの形状(ミリメートルサイズ)と月面の実際のクレーター形状(キロメートルサイズ)には実に似通ったものがあったりします(LPOD June 20, 2010).観測される奇妙奇天烈なクレーター形状を実験室の簡単な実験で再現し,天体の歴史を解き明かす,そんなシナリオを目指しています.


バラバラ破砕

fragment explosion dropinstrument BM model
[写真・絵は左からそれぞれ,ガラスの衝突破砕破片,パルスジェネレータによる爆発実験系,衝突破壊実験系,および二項分枝過程モデル.]

 衝突の結果として起こる現象はクレーター形成だけでなく破壊もあります.一口に破壊現象と言ってもいろいろなものがあるのですが,我々は特に(一気にバラバラになる)破砕現象に注目して来ました.ガラスやセラミクスなどの脆性材料に衝突や爆発などの撃力を印加するとバラバラになります.そのときの破片のサイズ分布の形やその遷移について実験的に調べました.分布は流体における乱流化の渦崩壊と同じような統計則を示すことが分かりました.カチコチの堅い固体と流れる流体の破壊に共通の法則があるのは面白い発見でした.また,衝突と爆発の相違点や類似点について議論しました.


パターン形成・フラクタル地形学

gel Gel Height Map Rough Surface moon moon_analysis
[写真・絵は左からそれぞれ,高分子ゲルの表面パターン,その3D計測例,荒れた成長界面模式図,月面高度マップ(と測線),測線上の断面プロファイルと自己アフィン解析例.]

 パターン形成,フラクタルなどの非線形科学と呼ばれる分野にも興味があります.とくにこれまで高分子ゲルの表面に出来るしわしわパターンや山脈地形の(自己アフィン)フラクタル性,紙にしみこむインクの成長界面の凹凸の(自己アフィン)フラクタル性などの問題に取り組んできました.地形のフラクタル性については今後,月や火星などへ適用していくことも出来るのではないかと考えています.パターン形成や上述の破砕現象については(マルチフラクタル的)多重スケーリングという手法を主に用いていて,私の博士学位は主にその手法について論じたものでした.


その他

SA5 TAKEX TestingMachine Vibrator Surface 
[写真は主要実験機器で左からそれぞれ,高速度カメラ Photron SA5,高速度カメラ TAKEX FC350CL,万能試験機 島津 AG-100NX,振動発生計測系 Emic,および表面形状測定系 KEYENCE LJ-G030 & COMS linear and rotation stages.]

 これまでは以上のようなテーマを手がけてきました(ちなみに成果として出版した論文リストはこちら)が,これからも面白いと思うことには臆せずチャレンジしていきたいと考えています.その際に実験計測手法の開発なども必要に応じて取り組みたいと思います.個人的には,計測系を組み上げる作業も科学的内容と同様に好きです.参考までにこれまで指導した修士論文のタイトルを挙げておきます.

ソフトマター地球惑星物理学!?

 その他のあとに何かあるのならその他の前に並べたいところなのですが,あえて最後に「ソフトマター地球惑星物理学」というものについて触れたいと思います.ソフトマターとはフランスのドゥジャンという物理学者による言葉で液晶や高分子,コロイドや粉体などの柔らかいもの一般を指します.その物理学は従来の弾性力学や流体力学の範疇のみでは扱えず,思い切ったスケーリングなどの手法が役に立つ場合などがあります.一方で地球惑星現象の構成要素も多くの場合何らかの意味で柔らかいもであることが多く,時間や長さスケールが大きいこともあって次元解析やスケーリングが有効であることが多いです.そこで,このソフトマター的発想や手法を地球惑星科学に適用していって,地球惑星科学の新たな側面を切り出していきたいという願いを込めた言葉が「ソフトマター地球惑星物理学」ということになります.ソフトマターの応用は生物や工学が圧倒的に多いと思いますが,地球科学においても重要な役割を果たせるはずと信じています.



地球惑星物理学への取り組み姿勢

 地球惑星科学は物理学・化学・生物学・地質学などの様々な科学的手法を用いて地球や惑星の歴史の謎に迫る学問です.我々の住む地球はどのような過程を経て出来上がったのか?その中で生物はどのように生まれ進化してきたのか?その壮大な歴史の謎を解くためには,これまで人類が手にしてきた科学的手法を総動員して取り組まなければなりません. 実はそもそも物理学・化学・生物学・地質学などの学問分野は人類が便宜上勝手に分類した体系であり「自然科学」の区分けに過ぎません.しかし残念ながら現代の自然科学全体(の最新の成果に至るまで)を一人の人間が完全に理解して駆使することはほぼ不可能です(そんなスーパーマンを見たことがありません). そのため,地球惑星現象にアプローチするためには組織として取り組む必要があります.私の所属する地球惑星物理学講座では主に物理学的な手法を用いることにより地球惑星現象の理解に迫ることとなります.具体的な地球惑星現象の物理機構に深く迫ることにより,物理学の基礎の進展にも寄与するようなことが出来れば理想的と考えています.実際,現象に対する基礎的な理解が深くなればなるほどその結果の普遍性は逆に高くなることが多くあると思います.

 地球惑星科学の意義は歴史科学のみにはとどまりません.科学がその真価を発揮するのは,自然現象を説明すると同時に何らかの予言が出来るようになった時です. 上述のような基礎研究の過程で普遍性の高い結果をひとたび得ることが出来たなら,科学における予想や制御の際に大きな力を発揮することになります.例えば,力学の発展の大きな動機の一つは大砲の弾の到達距離等を予想・制御することだったと言われます.しかし,理論体系として最終的に出来上がった力学は大砲の弾はもちろん壁に立てかけられた棒における力のつり合いから太陽の周りを回る惑星の運動まで実に幅広い現象を説明し,かかる力や運動の様子をも予言し得ます.力学の基礎を構築するような偉大な仕事は簡単には出来ないにしても,地球惑星科学に関連する物理的なモデルや手法の研究を進展させることにより,総合科学としての地球惑星科学および手法としての物理学の両方に意味のある(現象の説明と何らかの予言が可能な)成果を挙げることが個人的な目標となります(力不足を感じさせられることは多々ありますが...).

 現代の地球惑星科学は,純粋な知的好奇心に基づいた(いわゆる理学的な)科学としての側面だけではなく,社会的な側面も持っています.例えば産業の発達等による炭酸ガスの排出が地球を温暖化させていることが言われはじめて久しいですし,その他にも公害やゴミ処理などのいわゆる環境問題の基礎的な部分には地球惑星科学の知見が必要となります.また,地震や集中豪雨などの自然災害についての正しい理解のためにも地球惑星科学の推進は欠かすことが出来ません.これらの防災を含めた環境問題はいずれも人類の存亡に関わる重大な問題ばかりですが,自然科学のみで解決出来るほど易しい問題ではなく,工学等の幅広い他分野と連携する必要が出てきます.このような理由から学際的研究科としての環境学研究科に地球惑星物理学講座が所属しているものと私は理解しています.しかし私個人としては,基本的には物理学的手法において基礎的な知見を得ることにより,広く(将来的に)環境問題にも資する成果を狙うという姿勢を取りたいと思っています.

 これまで述べてきたように,地球惑星科学や環境科学などの複雑な問題はもはや単一の研究分野や個人の研究者で解決出来るものではありません.しかし,現代の大学はそれぞれの基礎専門分野の理解を推進する専門家の集団となっていると思います(専門分野で新たな知見を発見する喜びが多くの研究者の原動力となっていると信じています).この基礎専門分野の深化は大学の本来の大きな使命であることは疑いないと思いますが,今後はそれらの個別要素を融合させる専門家の役割も重要になるのではないかと思っています.それは既存の教授・准教授・助教などの枠組みとは全く別の専門職が大学に必要になることを意味するのかもしれません.社会の成熟等の要因により大学の役割も変遷することがあり得ることを考えると,そのようなことも今後考えていかなければならないのではないかと思います.時代とともに大学もその姿を(人員配置の組み替えによる改組のみでなく本質的に)変えていかなければならないのかもしれません.大学としては(専門性の高い人材のみでなく)そのような総合的で幅広い視点を持った人材も育成することが最重要課題の一つでしょう.

 とは言え,私個人も極めて狭い一領域の専門性を追い求めている一研究者に過ぎません.上記のような複合的問題を解決するための分野融合的な仕事を行える能力があるとは言い難いです.また,研究活動の駆動力は「自然界の真理に迫りたい」というものであり,新たな真実を見つけられたときの(それはとてもとても小さな発見なわけですが)発見の喜びは何物にも代え難いものだと思っています.以上をまとめますと,大袈裟な誇大表現になってしまいますが,自分の知的好奇心に従って自然科学の研究を真摯に行っていくことで,人類の知恵を少しでも蓄え,自分の専門・所属である物理学・地球惑星科学・環境学という各階層の進展に微力ながら寄与することが私の目標です(結局ジェネラリスト的仕事を逃れ自分の好きなことをやるための言い訳ではないか,という誹りは甘んじて受けます.やはり基礎研究が好きなのです.ただし,理学的な基礎研究だけでなく,省エネ技術などの応用研究には非常に興味があります.).その中で後進の指導や組織の管理・運営に貢献することも年齢と責任に応じて勤めなければならないことだと自覚しています(教育に関しては後述の通り本業ですし).



教育と研究に関する方針

 特に教育は現在の職位が研究職でなく教育職であることを鑑みると私の本業だと認識しています.教育においては,地球惑星科学や物理学の専門性はもとより計測技術や進捗管理能力やプレゼンテーション能力などの分野を問わず重要となる基礎的な力の養成を重視したいと思っています.この方針は,名古屋大学(大学院)を卒業(修了)する学生は分野を問わず将来的には指導的な立場に立つことが社会的にも期待されていることを意識しており,単なる専門性よりも総合的な能力を高める手助けが少しでも出来ればとの思いからきています.また,先に触れました「深い専門性だけではなく総合的で幅広い視点を持った人材」を育成するためには,このような基礎力の強化が重要になると考えています.もちろん,深い専門性により本質に迫る研究を行うためにもこれらの基礎力は欠かすことの出来ない要素であります.

 私達の研究グループへの参加を考慮されている場合,私がこれまで述べてきた指針に従って研究および教育活動に従事することをご理解頂ければと思います.ただし,価値観は個人により様々で,また大学のような組織では多様性は重要な要素です.学生でも社会人(大学生は既に社会人たるべきです)として常軌を逸さず他人に迷惑をかけない限りにおいては,自分の信念に基づいて行動して頂ければと思っています.物理的手法に興味があって研究活動をしたいと考えている学生は常に歓迎です(電子メール等でご相談下さい).学部1年生でも興味・関心があれば受け入れたいと考えています.逆に学部4年生や大学院生にあたる方でも研究活動に興味がなく「ただ楽をして卒業・修了したい」と考えている人は迷惑なので来ないようにお願いいたします.多くの学生にとって大学の研究室での研究活動は就職するまでの通過点になるのだと思いますが(産業界に優秀な科学・技術者を輩出することも理工系大学の大きな役割です),その中でも自ら必死に努力して何かを得る姿勢を持つことが重要だと思っています.

 物理学は基礎的な学問分野で,理解することが大変であることが度々あります(基礎科学はいずれの分野も同様に大変だと思われます).私自身もかなりの苦労をずっとしてきていますが(情けないことではありますが正直に言うと)物理学のほんの一部をかろうじて理解できているという程度です.しかし,苦労してある程度理解が進むと急に見晴らしが良くなって展開が見えてくることがあります.その域に達するまで耐えられる精神性を持った人が基礎研究に向いていると言えるかもしれません.この辺は実はスポーツとも相通ずるところがあります.競技会で高いパフォーマンスを実現するには地道な基礎の反復練習等が必要となり,それに耐えられる人でないと成功できません.

 以上の理由から地球惑星物理学を含む物理学の関連分野で研究の最前線に立つことは,初学者にとって簡単なことではないのですが学習法や文献の紹介など可能なサポートはもちろん惜しみません.具体的には以下に挙げる2点に重点を置いて教育・指導に臨みたいと考えています.特に学部学生向けは基礎力中心となり,大学院生に対しては徐々に専門力の指導に重心を移して行く感じになると思います.基礎力指導は専門分野を問わず重要となる能力を養成する(優秀な科学・技術者になるめのトレーニングで研究における「読み・書き・そろばん」に近い基礎技能に関連します)ことが目的で,専門力指導は地球惑星物理学分野における高い専門能力を養成することが目的です.更に大学院生の場合は(学位取得のためには)明確な科学的成果を出すことが求められます.  基礎力,専門力がある程度ついて科学的成果も挙げられるようになると(修士修了の頃を想定),自分の研究テーマについて見晴らしが良くなり,いろいろなアイデアが浮かぶようになります.その中から重要と思える問題に優先順位を付けて魅力的な問題から順に取り組むようにすることが重要だと思っています(時間は有限です).博士課程に進学する学生などにはそのテーマ選定などについては指導するかもしれませんが,実際の研究遂行は一任するスタイルにしたいと(理想的には)思っています.

 担当の学生実験および講義の指針は以下の通りです.  研究手法は主に「室内実験」です.基本的にはこれを継続しますが,必要に応じて観測や数値計算,理論などについても取り組むことが今後あるかもしれません(ただし実験への思い入れは強いです.その他の手法に取り組む場合は何らかの形での共同研究となることが予想されます).

 やや偉そうなことを書き並べましたが私自身も基礎力・専門力ともまだまだ未熟な部分が多いですので日々精進をしていかねばなりません.若輩で指導経験も豊富というわけではありません.それでも「やる気」はあるつもりですので,一緒に成長しながら基礎研究を成し遂げようという気概のある若い方々の参入を大歓迎します.

 長く書きましたが,これは意図的にそうしています.研究という活動の中では長い(そしてしばしば難解な)文章を読み込んで論理的に理解するという能力が求められます.これくらいの分量を難なく読めることは必要条件でしょう.ここまで辿り着かず途中で止めてしまった方(該当の方はここを読まないのですが)は,読む行為に対する忍耐が足りないか,そもそも私の考えがツマラナイ,下らない,もしくは間違っている等と感じた方でしょうから,いずれにしても私達のグループへの参加には向いていないのかもしれません. 最後に,まだ名古屋大学に赴任して間もないため,事情が分かって無くて頓珍漢な点等あるかもしれません.追加・修正すべき点があれば随時更新していきたいと思います.





(2014年9月25日:改訂)
(2013年7月9日:改訂)
(2013年4月11日:改訂)
(2012年3月7日:改訂)
(2011年11月9日:改訂)
(2011年5月12日:開設)