モンゴルは,移動式住居ゲルに遊牧民が暮らす「草原の国」のイメージがあります。しかし,近年の経済発展には凄まじいものがあり,2011年の経済成長率は17.5% と報告されています。それに伴い,首都ウランバートルでの大気汚染,鉱山地域での金属元素汚染が深刻な状況になっています。しかし,化学分析に基づいた定量的な環境評価はほとんど行われていません。モンゴルの環境評価に参加しませんか?

 

真冬のモンゴル

 真冬のモンゴルは,最低気温 -40 ℃にも達する極寒の地です。ウランバートルの水源である幅約 20 メートルのトゥール川が完全に凍ってしまいます。しかし, 底の方では水が流れていますから,水源としての機能は果たします。
 これでは水力発電もできません。原子力発電所もありませんので,火力発電に頼らざるを得ません(現在ウランバートルに3基が稼働中,さらにもう1基を建設中です)。この火力発で燃焼する石炭からの埃灰,車の排気ガス,伝統的住居「ゲル」から放出される埃灰などがウランバートルの大気汚染の原因と考えられています。
  右の写真で遠方が霞んで見えるのがお分かりでしょうか?天気は晴れです!朝夕の煙のような埃は深刻です。


試料採取

 分析用の粉塵試料は,2種類の方法でサンプリングをしています。
 ひとつは「エアーサンプラー」という粉塵を集める装置を使っています。これは,フィルターに空気を通して,含まれる粉塵をフィルター上に集めるものです。サンプリングは,名古屋大学のフィールド・リサーチ・センターに勤務している長谷川 精 准教授が担当して下さっています。
 もう一つは,冬期に路面の雪を集め,溶かした後にフィルターで濾して,含まれる粉塵を集める方法です。これは,名古屋大学リーディング大学院プログラム「PhD 登龍門」のフィールド実習の一環として行ったものです。ウランバートル市内ならびに周辺80カ所でのサンプリングをしました。


雪試料採取を終わってたたずむ福田君とアンゲルさん
現在の状況と今後予定している研究

 現在は,修士1年の福田君が,エアーサンプラーで回収した粉塵試料や石炭・ゲルの灰・道路脇粉塵などの無機化学成分や生元素の分析を行っており,大気粉塵の起源とそれぞれの寄与の大きさを明らかにするために頑張っています。予定では,雪試料に含まれていた粉塵試料の分析も行う予定です。

 一方,冬期の試料には数+パーセントを超える炭素が認められており,この中には様々な有機化合物が含まれていると考えられます。その中には,人体に悪影響を及ぼす化合物も含まれている可能性があります。そこで,粉塵試料からジクロロメタン抽出を行い,どのような有機化合物が,どの程度の濃度で含まれているのか?を検討することを予定しています。興味のある方は,ご遠慮無くhamchans(a)nagoya-u.jpに問合せ下さい。モンゴルに行く機会も訪れることと思います。