山本は,学部学生の時には化学教室に所属しており,分析化学に強い興味を持っていました。そのために,今でも分析法の開発には興味が あります。そこで,良い分析をするための注意点を・・・独断で・・・


 1.良いスタンダードを手に入れること。そのためには・・・自分自身で注意深く作ることです。一番の近道です。いくら装置の感度が上がって,微量な元素を定量できるようになったと言っても,良い標準試料がなければ宝の持ち腐れです!

2.試料の扱いの要点を身につけること。すべてのプロセスを注意深くやるに超したことはありません。しかし,ミスは必ずするものですし,手を抜ける部分までエネルギーを使いすぎていては,こなせる試料の数が限られてしまいます。地球化学をやっている限り,試料の数も重要な要素です。数をこなしたことによって見えてくることもあるはず!

3.装置に使われるのではなく,装置の原理を把握して使いこなすこと。自分で出来る修理は自分でやるべきです。業者に修理依頼をしたら,傍らについて,色々と教えてもらうこと!2度も同じ修理依頼をしていては,いくら研究費があっても追いつかない!くらいのつもりで。

4.分析は「目的ではなく手段」です。どの程度の精度の分析が必要なのか?分析値を用いて議論をするときの目的をハッキリさせて,必要な精度を考えた分析をすること。


 くらいでしょうか?以下に,今までやってきた分析法の開発の一部を紹介します。


同位体希釈分析法によるマイクログラム量の 試料中希土類元素の分析



 山本自身の発案の実験ではなく,神戸大学に助手として赴任したときに上司から頼まれた仕事です。5マイクログラムに相当する BCR-1(アメリカの標準岩石試料)中の希土類元素の分析を担当しました。一番左の3列分が私の分析値です。良い結果が出ています。なぁんちゃっ て・・・ 神戸大学では同位体希釈分析に用いる「希土類元素のスパイク溶液」の調整も行いました。標準試薬の恒量からスパイクの同位体比測定,スパイク溶液の定量等々で1年がかりの仕事でした。このときに調整した標準溶液が後に大変役立ちました。
( Nakamura et al., Analytical Chemistry, 61, 755-762, 1989)


蛍光X線分析用微量元素標準試料の調整




 蛍光X線測定の標準試料として,主成分元素には地質調査所発行の標準岩石試料で通常の岩石試料の定量には十分といえるでしょう。しかし,微量元素となると,報告値には大きなばらつきがあり,推奨値(参考値)はそれらの値の単なる平均値的な意味しか持ちません。そこで,自分自身で標準試料を合成しました。表にあるような試薬と主成分元素の酸化物試薬を混合し,炉で溶融して標準試料を調整しました。詳しくは論文をお読み下さい。
(山本&森下,地 質学雑誌,103, 1037-1045, 1997)


希土類元素の高精度分析


 名古屋大学でICP-MSによる希土類元素の分析を始めた頃,Anders & Grevesse (1989)によるCI隕石組成で規格化してパターンを描くと,重希土類元素がギクシャクしていました。分析値が悪いのか?とずいぶんと悩みましたが,東 京都立大学でも同じように,Andersらの値に疑問符が付けられており,都立の結果と名古屋大学の結果を相互に規格化すると大変スムーズなパターンを示 し,名古屋の分析値が悪くないと自信を持てるようになりました。


 ところで,地質調査所の参考値をみると,重希土類元素の 分析値が悪いのが一目瞭然です。もっと質の良いデータを提供したいと思っていますが・・・研究として成立するようなテーマではありませんので,また時間を みながら,ボチボチと分析を進めていきたいと思っています。
(Yamamoto et al., Geochemical Journal, 39, 289-297, 2005)
 
ここには出しませんが,多くの失敗もありました。新しい分析法は、なかなか思ったとおりにいくものではありません。でも・・・好きですので,今後も色々考えて,色々試してみたいと思います。

蛍光X線分析と希土類元素分析,ほかに,イオンクロマトグラフィーによる水試料中の主要陽・陰イオン分析,元素分析計による炭素・窒素などの生元素分析は,常に出来る状況になっています。蛍光X分析は通常以上の精度で,希土類元素はかなり高精度で分析が可能だと思っています。依頼分析をお考えの方はご遠慮なくお問合せ下さい。また,研究のためにこれらの分析をしたいと考えている皆さんも hamchans(a)nagoya-u.jp にお問い合わせ下 さい。