東京・名古屋・大阪・・・いずれも内湾に沿って発達した都市です。従って、内湾は大都会の人間活動による汚染を受けやすい「海」ですし、逆に大都会に住む人類にとっても影響の大きな「海」といえます。
 海洋底の堆積物の汚染を調べるために,乾燥した堆積物から有機溶媒により有機物を抽出し,その中に含まれる金属元素含有量を調べる研究を行いました。なぜ有機溶媒か?は,以下をお読み下さい。

 

なぜ,有機溶媒抽出か?

 大阪湾をはじめとする内湾域は,背後に人口集中した大都市を控え,人為的な汚染にさらされている。このような内湾域の汚染を評価する上で,堆積物の全体分析が行われることが多かった。しかし,このような分析では,含まれる鉱物組成の違いが化学組成に反映し,人為汚染の程度を評価することは難しいと言えます。そこで,全岩ではなく,有機溶媒抽出される金属の化学分析を通して,環境評価を試みています。
 有機溶媒を用いることのメリットとして,1) 周辺の間隙水や海水に溶け出しにくい珪酸塩中の金属元素を抽出しないこと,2) 酸化還元状態変化により海水へ溶け出すであろう金属元素を定量できること,が考えられます。

大阪湾堆積物

 大阪湾は,東半分は海水が停滞して汚染が進んでいます。一方,西の淡路島側は明石海峡と紀淡海峡を通じた海水の入れ替えが激しく汚染が少ない環境です。この対称性のために環境研究には適したフィールドです。
 試料は,大阪湾全体にわたる182試料を用いました。図中の○の位置で泥質堆積物の試料採取を行いました。
 最近は,名古屋から遠い大阪湾までの試料採取が困難になってきましたので,三河湾を中心に移しています。



用いる有機溶媒

 出来る限りいろいろな相から有機溶媒抽出することを目指し,「トルエン - メタノール」混合溶媒を用いました。しかし,メタノールは極性が強く海水とも混合するため,間隙水中の金属元素も抽出してしまいます。

(右図は,「トルエン - メタノール」抽出したした溶液の塩素とナトリウム濃度の相関図:トルエン-メタノール抽出した液に含まれる塩素とナトリウムの比は、実線で示した海水組成とほぼ一致し、海水起源の塩類を抽出していることを示す。)



 そこ で,極性の異なった有機溶媒(弱いものから強いものへ)を用いて,異なった相からの抽出を検討しました。下図に,「ジクロロメタン」に引き続いて「トル エン – メタノール」混合溶媒で抽出・分析した結果を示します。黒■のボックスで示したのが,「ジクロロメタン抽出」,白□で示したのが「トルエン – メタノール」抽出の分析結果です。元素によっては溶媒の種類により大きく算出濃度が異なっています。



 これらの分析結果を地図として示し,海流との関連,人為活動との関連などいろいろな情報と組み合わせて検討しました。
(Yamada et al., Marine Pollution Bulletin, 52, 231-238, 2006)
(山田ら,環境化学, 13, 983-992. 2003)





現在は,このテーマに取り組んでいる学生はいません。ご興味のある方はご遠慮なく hamchans(a)nagoya-u.jp までお問い合わせ下さい。