東京・名古屋・大阪・・・いずれも内湾に沿って発達した都市です。従って、内湾は大都会の人間活動による汚染を受けやすい「海」ですし、逆に大都会に住む人類にとっても影響の大きな「海」といえます。
 海水中の微量な有害金属元素を定量することは,高濃度のナトリウムや塩素などの妨害を受けて困難です。そこで,海水の中で長期間にわたって育った大型藻類を海水の汚染指標として用いることを検討しました。現在では,潮間帯の汚染度を調べるために,二枚貝の化学分析を行っています。



海水汚染評価に藻類を用いる訳

 海水の汚染を評価するためには,汚染海域の海水の化学分析がもっとも直接的かつ正確です。しかし,海水には多量の塩類が溶け込んでいることによる分析の困難さ,また,試料を採取した瞬間の状態しか反映しないこと,などの問題があります。
 一方,海藻は仮根で岩場に付着し、栄養塩類は葉の表面から取り込みます。従って、藻類の化学分析を通して,周辺海水の季節変動に左右されない長期的汚染度の違いを評価できる可能性が高いといえます。そこで,褐藻の「ワカメ」や緑藻の「アオサ」などの化学分析を通して海水汚染評価の指標を作り上げることを目的としました。


大阪湾のワカメの特徴

「ワカメ」に重点を置くメリット として

1) 海水汚染に対し耐性があり汚染の著しく進んだ海域でも採取可能であること
2) ワカメは同定が容易であり水深の浅いところにも生育しており採取が容易であること
3) 大阪湾のワカメのほとんどが遺伝的に均一であることが共同研究者の川井教授の先行研究で明らかなこと
等があげられる。また、大阪湾は東部では著しく汚染が進んでいるのに対し、西部の淡路島付近では汚染度が低い。従って、汚染状態の違った海域でのワカメの 試料採取が可能である。

(右図のうち 1. 葉 2. 茎 3. めかぶ 4. 仮根 です。)


分析結果の一部

 ワカメの藻体は,葉・茎・めかぶなどの各部分に分かれています。どの部分を測定するにより,得られる金属元素濃度に大きな違いが出てくることが考えられます。
 右図は,ワカメの葉とめかぶ部分の金属元素濃度を示した図です(Yamada et al.,2007)。平均して葉の方が金属元素濃度が高いため,この部分を化学分析に用いました。


 大阪湾から採取したワカメの「葉」部分の分析結果です。クロロフィルの主成分であるマグネシウムにより,他の金属元素濃度を規格化してあります。色をつけた マークは漁港などの汚染の進んでいると思われる場所からの試料です。亜鉛やニッケルなど,環境によって優位な差が出ているように思えます。


(Yamada et al., Phycologial Research, 55, 222-230, 2007)

残った課題

まだまだやるべき課題がいっぱいです。
1.大型藻類の種類と試料数を増やして,どの元素の汚染評価にはどの藻類が適しているのか?までを特定したいものです。
2.海水の分析もあわせて行い,各藻類がどれほどの元素濃縮係数を持っているのかを,各藻類毎および元素毎に決定できたら良いのですが・・・

ここまでできあがると本来の目的完了といえるでしょうか?


現在は,このテーマで研究を進めている学生はいません。三河湾を中心として,是非とも再検討したいと思っています。海の好きな方,一緒に研究しませんか?